カシミヤ100% 天使のストール



― 開発秘話 ― 

1.ニットの常識を無視した無謀な編地

この、『天使のストールシリーズ』は、手に取ったほとんどの人が『やわらかい!』『気持ちいい!』といってくれる我がUTO自慢のシリーズです。 カシミヤならでは、いや、カシミヤでもここまでの風合いの商品はそんなにあるもんじゃないと自負しています。


 この天使、初めてトライしたのが1994年。 カシミヤをライフワークにしていこう、カシミヤでしかできないものを、と何回も試作して作り上げたものです。


 この開発に協力して頂いたのが内田昭三さん。  内田さんは現在の日本ではほとんど編む人がいなくなってしまった細かい編地の12ゲージ、10ゲージを細部まで神経を行き届かせて丁寧に作ってくれるUTOの宝で、私が今まで35年以上ニットに携わってきた中で出会った最も優れた技術者の一人でまさに私のニットの師匠でとても尊敬している人です。  その内田さんにお願いしたのが『26番双糸1本で5ゲージの天竺を編んでほしい』と。


 ちょっと専門的になりますが、5ゲージを編むには26番や24番双糸の3本取(3本を重ねて編む)が常識なんです。 太い針に細い糸で編むんですから切れやすくかなり邪道で編むほうは大変なんですが、そんな無謀なお願いをしてしまうのがUTOのずうずうしさです。


 糸と編み機が適番なら機械はスムースで全然問題はないんですが、この天使の場合は引張りがちょっと強いと繊細なカシミヤ糸はすぐに切れてしまいます。又、手横機は編んでいるとき適度の錘をつけて、その錘の重さで引っ張りながら編むのですが、編地が繊細なためにほとんど錘をつけられないんです。 そのために細心の注意を払いながら編み立てます。強度のある化学繊維や綿、引っ張りに強よい梳毛などの糸なら自動機でも編めるし、複雑な編地でもこんなに苦労しないんでしょう。

2.世界最高峰の日、英、伊、中のカシミヤ100%の糸を試して決定


 内田さんの努力でなんとか『26番双糸1本で5ゲージの天竺』が編めることが分かりました。その時内田さんに言われたのが、「糸によって編めるのと編めないのがあるね!」と。「糸の番手が同じでも、メーカーが違うと同じサイズにならないね!」という一言でした。そうです!紡績会社によって糸はそれぞれの特徴があり、同じように編んでも仕上がりは同じではないのです。
 その頃から、ゆくゆくは世界でどこもやっていない「ニットのサイズオーダー」をやりたいと思っていたので、この天使を機会に糸を統一して1社を決めたいと思っていました。

今後の糸を決める為には一番大事なことでしたので、一番難しい「適番の常識を外れた天使も編める糸を決める」ことを目的に内田さんにテストしてもらいました。


 内田さんの手横機は、いわゆる人間が手で機械を動かしながら編み進むもので、自動のコンピューターの機械編みと違い、糸の微妙な具合が手に直に伝わります。「この糸は、堅い!」とか、「切れやすい」とか、「伸びが良い」とか、糸と対話しながら糸の性能を判断してもらえるのです。


 なけなしのお金を工面して、当時日本で入手できる世界で最高峰のカシミヤ100%の糸ばかりを、取り寄せました。日本の紡績では、FJ毛織、Tの東洋紡糸工業、FK毛織、KO毛織、イタリアはLO社、CA社。当時世界で最も評価の高かった英国のTD社。そして参考までにと、中国のKS社の糸を取り寄せて、合計8社の糸で編んで評価してもらいました。


全ての糸を編んで仕上げした結果、「宇土さん!これにしてよ!」と内田さんが言った糸が東洋紡糸工業さんの2/26TZ糸でした。嬉しく、そして嬉しくない決定です。決まったことはとっても嬉しいのですが、日本の中では一番値段が高いのです。たぶん送料や税金を引いたら英国やイタリアの輸入糸より高かったように思います。以来ずっと東洋紡糸工業のカシミヤ100%の2/26TZです。

愛らしくふわふわと天を舞う天使をイメージするこのセーターやマフラーは、こんな具合に熟練の匠に苦労してもらい開発しました。


私もこの天使のマフラーをもう7シーズンも首に巻いています。かなりくたびれてきましたが首に当たる柔らかさがたまりません。
前年に買っていただいたお客様から色違いを注文いただきました。『軽くて気持ちいいよ』の感想に嬉しさ倍増です。


こんな繊細な商品ですからどうかやさしく取り扱ってあげてください。
特に脱ぎ着のとき指輪やイヤリングなどははずしてくださいね。

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